「アベする」は流行語大賞〜中日新聞川北隆雄、かく語りき

 最近、人名の後に「する」とか「る」を付けて動詞化することが、はやっている。その中で最も流行したのは、やはり「アベする」ではないだろうか。

 これは今さら説明するまでもないだろう。首相としての「職責」にしがみつかず放棄しながら、衆院議員の「職」にはしがみつく安倍晋三前首相の無責任な行動に由来する。

 この言葉が本当に「流行語」なのかどうかについては、一時、捏造疑惑も流れた。あるコラムニストがある新聞に流行語として紹介したところ、インターネット上で、「その時点ではまだ流行しておらず、コラムニストのでっち上げではないのか」という批判が殺到したのである。

 しかし、コラムニストが紹介する以前に公の場で使われていることは明らかなので、捏造ではない。つまり、捏造疑惑の方こそ捏造の疑いが濃厚だ。

 私は、これを今年の「流行語大賞」に推薦したい。
 同賞を選定している自由国民社の審査委員会は、ぜひ、聞き届けてほしいものだ。

 もう一つ、人名の動詞化では、「サワジる」も面白い。
 これは、女優の沢尻エリカさんが出演映画のキャンペーンの際、「不機嫌でビッグな態度」を取ったことからきている。
 なかなか秀逸な言葉だとは思うのだが、ネットの検索エンジンで調べる限り、「アベする」に比べると、流行度は低いようだ。大賞は無理だろうから、トップテンの一つにどうか。

 どちらも記憶にとどめて、アベしたりサワジったりしないよう、戒めの言葉にしたい。

 ※中日新聞 10月30日付 夕刊コラム「一筆両談」

※有志によるキャプチャ:ttp://www.uploda.org/uporg1089079.jpg

※前:http://news22.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1193801824/

毎年発表される流行語大賞であるが、年の暮れに発表されるがゆえに、すでに少々古めかしくなった言葉が選ばれることがある。これは興ざめではあるのだが、しかし、ああ、今年もそんなことがあったな、と思い返させてくれる良い機会でもある。
だが、果たして「アベする」でどれぐらいの方がこの「懐かしさ」を抱くであろうか。管理人の回りことだけで述べても仕方が無いが、管理人は「アベする」を直に聞いたことがない。「目にした」ことがあるのはネットの中のみだ。これでは興ざめどころではない。大多数の方が「そんな言葉があったのか」と疑問に思うのではないであろうか。
川北隆雄氏は記事内で『これは今さら説明するまでもないだろう』と前置いた上で、「アベする」の語源をこう説明する。

首相としての「職責」にしがみつかず放棄しながら、衆院議員の「職」にはしがみつく安倍晋三前首相の無責任な行動に由来する。

しかしながら、「アベする」騒動(「アベする」が流行語か否かが争われた騒動)に触れたことがある方はこの定義に疑問を抱くに違いない。この言葉を「最初に使った」*1*2コラムニストの石原壮一郎氏は朝日新聞でこう語っていた。

「自分勝手な美学で情報を隠し、国民を混乱させた」と話す。

 辞任時に体調不良を明らかにしていれば無用な混乱はなく、イメージダウンも防げたのではないかと指摘する。

 「『アタシ、もうアベしちゃおうかな』という言葉があちこちで聞こえる。仕事も責任も放り投げてしまいたい心情の吐露だ。そんな大人げない流行語を首相が作ってしまったのがカナシイ」

この中で、衆議院議員の職責にしがみ付く氏を批判する言葉はない。安倍氏衆議院議員であることに向けられる批判はあまり一般的とは云えない。川北氏は不満なのであろうが、「流行語」の語源ではない。この点からして川北氏と「流行」との乖離が見受けられる。


そして、川北氏はこの記事が引き起こした騒動について言及する。氏の結論はこうだ。

 しかし、コラムニストが紹介する以前に公の場で使われていることは明らかなので、捏造ではない。つまり、捏造疑惑の方こそ捏造の疑いが濃厚だ。

つまるところ、「公の場」で使われていれば即ち「流行語」であるらしい。だが、国語辞典の一つである「大辞泉」の「流行語」の項目にはこう書いてある。

ある時期、多くの人々の間で盛んに使われる語や言い回し。はやりことば。

これを読めば分かるように、「公の場」云々は全く関係ない。川北氏は、文筆家でありながら、意味を知らずに「流行語」という言葉を使っていたことになる。恥ずかしくないのであろうか。なにより、テレビをあまり見ない管理人ではあるのだが、テレビや新聞等で「アベする」が使われる現場を見たことも聞いたこともない。試しに、朝日新聞のサイトで「アベする」を検索してみよう。結果はこの通り*3、ゼロ件だ。なんと元記事すら消されている。念を入れて読売新聞でも検索してみよう。やはりゼロ件だ*4。新聞のみで「公の場」は語れないが、一つの指針にはなろう。これで「公の場」がどうなっているのか。推して図るべし、である。
追い討ちをかけると、『捏造疑惑の方こそ捏造の疑いが濃厚だ』という行も、日本語として違和感を覚える。捏造疑惑の、根拠が「捏造」であると云いたいのであろうか。コラムゆえに文字数も決まっているのであろうが、これでは「捏造疑惑」の何が「捏造」であるのか非常にわかり辛い。「捏造疑惑」そのものはあったわけである。この事実は「捏造」ではない。


そして氏は、自信を持ってであろう、この言葉を「流行語大賞」に推薦する。比較対象の「サワジる」も管理人は使ったことが無いし、周囲や「公の場」でも聞いたことはない。対抗馬としては大変力不足な感がある。
川北氏はネット内で「アベする」と「サワジる」の二語を検索したようだが、その具体的な結果は記事内には書かれていない。管理人が気になって調べてみたところ、ヤフーに於いて「アベする」は約223000件。「サワジる」は約401件。確かに、「アベする」の方が圧倒的である。
しかしながら、ここで「アベする」騒動の中で生まれた「アサヒる」にご登場願おう。検索結果はどうであろう、なんと約510000件。「アベする」のほぼ二倍だ。もちろん、ネットの検索結果数だけで流行語など決められるはずはない。だが、川北氏の「定義」に拠れば「アベする」よりも「アサヒる」の方が流行ってた(流行っている?)ことになる。
更に云うならば、「アベする」を検索した結果、最初に出てくるのは「アベする」が流行語であるかを問う記事である。氏は検索したはいいが、記事の中身まで確かめなかったのか。報道人として、この詰めの甘さは批判されるべきであろう。ちなみに、第四位はこの、川北氏の記事にネット上で疑問がでていることを報じるものだ。また、「アベする」とあわせて検索されている言葉に「中日新聞」が多いらしい。この記事の影響であろう。
また、「アベする」の記事内では「アサヒる」があわせて紹介されている場合が多い。「アサヒる」の語源の説明の為に「アベする」は使用せざるを得ず、これを果たして「流行」と云っていいものか。

氏は、朝日新聞ですら見棄てた「火中の栗」をわざわざ拾いに行った形となった。火傷は免れない(というか、すでに重度のそれであろう)だろうが、「アベせ」ずに、最後までこの記事に責任を持っていただきたい。




よければこちらにも足を運んでください
鬱々日記〜特定アジア3面記事編



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訂正

本日の小欄に於いて、「アベする」を石原氏の記事で初めて目にした、と書いたが、事実としては以前に書いたよう、石原氏の記事の数日前に朝日新聞の投書欄「声」の中の「かたえくぼ」のコーナーで見たのが初めてである。ここにこれを訂正し、お詫び申し上げる。

ただ、これが川北氏の云う「公の場」だとしたら、それは甚だしい間違いである。投書欄の、しかもネタコーナーを「公の場」といい、そこに載ったから流行語であると勘違いしたとなると、氏の「公」に対する理解を疑わざるをえない。それとも、新聞人はみなこのような考えを抱いているのであろうか。だとすれば、これは新聞業界全体の問題だ。

*1:管理人の主観からすれば、初めて「アベする」を聞いたのはこのときである

*2:下に訂正文を載せています

*3:リンク先は朝日新聞サイト内で「アベする」と検索した結果

*4:リンク先は読売新聞サイト内で「アベする」と検索した結果