インド洋より海自撤退〜戦略なき国家の象徴

日午前零時を以てテロ特措法の期限が切れ、インド洋に展開中の我が国の海上自衛隊派遣部隊は撤退行動にはいった。他国の有志連合軍が作戦を続行する中、戦友たちに背を向け、戦列を離れざるを得ない隊員たちの思いは如何ばかりのものであろう。昨夜のNHKニュースでインタビューに答えていた派遣部隊指令の発言には諦観の色が滲んでいたように感じられる。
法治・文民統制を旨とする我が国であるから、派遣根拠となる法がない以上、政府は撤退命令を出すほかになく、また、現場部隊も指示に従うしかない。例えそれが明白に国益に反していようとも、である。
米国をはじめとする有志連合各国は日本の補給活動再開を強く望んでいる。のちにも述べるが、艦艇への補給活動は我が国の得意分野であり、他国に対しアドバンテージを有する分野である。それを国際協力の場に生かさないというのは非効率きわまる。
また、先にも述べたよう、日本は未だに作戦行動中の他国部隊に背を向けて撤退に入った。日本の未成熟な軍政分野を知る人々には理解してもらえるかもしれないが、そうでない他国民の目には、これがどう映るであろう。
中途半端に仕事を放棄した日本海軍(海外では自衛隊などとは呼ばれない。国軍扱いである)。いざと云う時に背中を預けることの出来ない同盟国。
日本の国際的信頼は大きく揺らいだと云っていい。
支那が台頭する中、日本と手を組み対抗したいと考えるアジア各国もあったであろう。そう主張する各国の親日派の立場が悪化したであろうことは疑いようもない。
ともに軍事作戦を展開中に、日本で政局が変われば、背中を撃たれる恐れがある。インド洋がそのいい例だ。
日本との盟を望む政治家が、反対派にそう反論されるようになりかねない。
日本は大きな誤りを犯した。国益は大変な深手をおったのである。

この事態を最も醒めた目で見ているのがアメリカであろう。
日本に対する信頼は大きく損なわれたに違いない。今後の、対北朝鮮支那問題で本当に蚊帳の外に置かれる可能性もある。このような背信行為をしておきながら、米国に対して「北朝鮮テロ支援国家のリストから外すのはやめてくれ」というのはあまりにもむしが良すぎる。米国には米国の戦略がある。そのことを念頭に於いておかなければいつか足元をすくわれる結果になるだろう。
これ以降もインド洋補給に関する法案の成立が遅れれば、対北朝鮮問題でアメリカが本当に圧力をかけてくることすら想定される。米国駐日大使が、「最良の同盟国たる日本を裏切るような、テロ支援国家指定解除は賛同できない」と発言したことに対しても、面目が立たない。

北朝鮮支那はこれを見て、日本への侮蔑を更に強めたに違いない。
口では「日本の軍事大国化を懸念せざるを得ない」などと云いながら、腹の内ではせせら笑っていよう。どれだけ日本が強気に出ようが、それが空威張りであると考えるであろう。この誤解が、果てには最悪の事態すら招きかねない。

全てに於いて悪しき点しか見いだせない、本作戦よりの撤退に日本の行く先が見えたような気さえする。





では今日もいきましょうか。