カティンの森事件

そういえば、と思い出したので書きます。
1年ぐらい前だったか、この事件に関する映画を観ました。映画の評価に関しては触れませんが(管理人は洋画好きの割に登場人物を一発で覚えられないのでストーリーを勘違いしたりすることがたまにあります。そんな管理人の感想は、少しわかりにくかった、というものです)、この映画は第二次世界大戦初期にポーランドで起こった虐殺事件を描いたものです。
詳しい内容はウィキペディアなりに譲るとして、「カティンの森事件」とは1940年前半、独ソ不可侵条約内の秘密条約に基づいて行われたソ連によるポーランド「解放」後、捕虜となった将兵のうち数1千人がソ連内務人民委員部(NKVD)によってポーランド領カティン村近郊で虐殺されたという事件です。
この虐殺事件は、後に独ソ戦が始まり旧ポーランド領がすべてドイツに占領されるなどということもあり、同映画でも描かれるよう、「犯人」が二転三転します。
初め、ポーランドが独ソ両国に占領されたのち、ロンドンに避難した亡命ポーランド政府は25万人の将兵及び民間人が消息不明である、とソ連側に調査を求めますが満足な回答は得られず、また捕虜返還も遅々として進みませんでした。これに対し亡命ポーランド政府はソ連への不信感を強めていきます。
そして、この間に実はカティンの森事件は起こっていたのでした。
その後、ドイツ軍占領後、当時から噂になっていた「虐殺事件」をドイツ軍が調査し、遺体遺棄現場を発見します。その後、ドイツ政府は反ソ宣伝の材料とするという目的も持ちながら同事件の詳細を調査し、同時に世界へと公表、公明正大性を確保するためにポーランド赤十字赤十字国際委員会への調査依頼や連合国を含めた各国ジャーナリストの取材、また連合国側捕虜への取材を許可します。この時ソ連政府はドイツ政府の発表に対し、ドイツ占領後にドイツが行った虐殺と非難する声明を出しています。
二次大戦中、ドイツ政府はこの事件を反ソ連宣伝に活用しましたが、一方で他の国際団体等は明確にソ連の犯行であるとの断定はしませんでした。やがて東部戦線においてドイツ軍は敗走をかさねポーランドは再びソ連の占領下となり、ドイツ軍はもとより国際団体なども「撤退」しました。
二次大戦終了後、ニュルンベルク裁判においてソ連側はこの事件を「ナチス・ドイツによる非人道的犯行」として告発しますが、米英の支持が得られずニュルンベルク裁判では触れられませんでした。
その後、ポーランドは東側諸国構成国となり、ポーランド政府が真相究明に乗り出さなかったこともあり、この事件は歴史の闇へと消えてゆきました。
1980年代終盤、ソ連ではペレストロイカが始まり、情報公開が進みます。その中で、ソ連の学者たちはこの事件がスターリンの命令によるものでありNKVDの長官であったベリヤらが命令書に署名していた、という研究結果を発表します。1990年にはゴルバチョフがこのことを認め、ソ連崩壊後はロシア政府がこの事件や他の虐殺事件に関する命令書等を公開するに至りました。


なぜ管理人がこのことを書こうかと思い立ったか。
単純にいえば、歴史は勝者によってつくられる、ということが言いたかったからです。小欄で何度も書いてきたことですが、この事件はその典型ではないでしょうか。
もちろん、ドイツが二次大戦中にユダヤ人を中心とする東方他民族(ポーランド人もその主要な被害者です)を虐殺していたという事実から、この事件がドイツによるものと言われても一定の説得力はありました。少なからず誤認する土壌はあったのです。しかしながら逆にいえば、そういった「ありそうな話」でも実は真実ではないこともあります。
特に、二次大戦後、東側諸国は西側からはもちろん、その内部においてもブラックボックスでした。学術的調査や研究がなされないまま、またプロパガンダを多分に含んだ話が「事実」として西側に喧伝された事例は多数あります。この事件もその一つといってよいでしょう。

あまり詳細に書く気はありませんが、そういえば、と思う事件もなくはありません。大規模な虐殺が起きれば少なからず噂になるものです。しかもそれが外国人租界に隣接する場所であればなおさらです。当時から国際赤十字など国際団体は存在し、その調査が行われても不思議はないのに一切行われずその有無が当時の外国人によって肯定も否定もされている事件がありましたっけ。その事件は、某「被害者」政府によれば被害者数は30万人とされています。この事件が、真に現地での調査(決して聞き取り調査ではなく遺体の発掘など)が行われるのはいつになるでしょうか。「被害者」政府はこの点に関してはいまだ「ブラックボックス」です。

同映画では、事件の真相を知る人物がソ連政府の圧力に苦悩する姿が描かれています。管理人の記憶が正しければ、彼は死を選びました。ブラックボックスは人を殺すのです。果たしてこの「ブラックボックス」は