政争の具に成り果てたイージス駆逐艦「あたご」衝突事件〜マスコミ・野党が主張しない「疑問」

この事件がおこり10日ほどがたった。衝突された漁船の乗組員二人は未だに発見されていない。もはや生存は絶望的であろう。この間、雪山でベテランスノーボーダーらが遭難するという事件があったが、彼らは生きて還ってきた。彼らは「山を舐めていた」と悔いていたが、管理人からすれば「山男を舐めていた」と感じたものだ。本件も、事件当初は、「海の男を舐めていた」とでも云えるかと、生存を願っていたが、それももはや叶わないと思われる。
本件が、現段階で管理人が知りえる情報から想像するに、「あたご」のほうに問題があることに異論はない。しかしながらこれは、須らく大型船舶に云えることであろう。漁師へのインタビューなどでも、「タンカーをはじめとする大型船は避けない。こちらが避けるのが常」といった趣旨のものを見たことがある。

そして本件を受け、またしても「自衛隊防衛省の隠蔽体質」が非難の槍玉にあがっている。しかしながら、管理人に云わせて貰えば、これは自衛隊防衛省のマスコミ不信体質」である。一連の報道に接していれば、管理人のような聞きかじりの知識しか有しないずぶの素人でも誤りだと理解できる、「識者」の批評がどれほど多いか実感できる。例えば、テレビ朝日解説委員である川村晃司氏は、自身がレギュラーコメンテーターを勤める【ワイド!スクランブル】に於いて、「レーダーに映らないならミサイル迎撃はどうするんだ」という趣旨の発言をしている。氏は、対空・対艦(洋上監視)のレーダーが違うことすら知らないのである。ちなみに管理人は、事件当日の朝、フジテレビの【めざましテレビ】か【とくダネ!】かのどちらかの番組で、対空と対艦レーダーが別物であることが云われていることを聞いている。氏はどこまでもお粗末であるようだ。
また、報道ステーションに於いてはキャスターの古舘伊知郎氏が「あたご」がハワイでの弾道ミサイル迎撃実験から横須賀へ寄港中に衝突と報じたようだが、実際には通常の対空ミサイル発射訓練であったらしい。詳しいことを云えば、「あたご」には弾道ミサイル迎撃に使用されるSM−3を搭載する予定はないそうだ。同様に、「防衛省幹部」の話として共同通信が、「MD計画への悪影響」を報じたようだが、これも軍事に関しての有識者であるJSF氏からは疑問視されている。二つの件に関しては、またしてもであるがJSF氏の【週刊オブイェクト】の各記事を参照にしていただきたい。
また、軍事専門家を名乗る清谷信一氏は自身のブログで朝日ニューススターの番組「ニュースにだまされるな」に於ける小森陽一東京大学大学院教授の「批判」を痛烈に批判している。小森教授の発言は、管理人からしても失笑物、かつ、これが電波を通じて朝日ニューススター契約者のテレビに流れ込んだのかと思うと頭が痛くなる話である。曰く『今回の事件が起こったのは日米軍事同盟が太平洋と宇宙を縄張りに軍拡化しているから』*1であるらしい。発言への批判は清谷氏が先にしているので割愛させていただく。また、別の日の「あたご衝突事故 それにまつわる雑感」欄にはには、マスコミ各社が盛んに取り上げていた「自動操舵」に関する「報じられない事実」が書かれているので、ぜひ目を通していただきたい。
さて、これだけ、事実に反し、的を得ない中傷を物知り顔で行われるのだから、自衛隊防衛省としても、それが事実であろうがなかろうが発表したくもなくなるであろう。もちろん、シビリアンコントロールという観点からは、納税者への説明は不可欠である。しかしながら、今日の状態では、自衛隊防衛省の説明は報道機関を通して行われ、その管の役目を果たすはずの報道機関が発表に妙なバイアスをかけてしまっているのである。組織は須らく、組織防衛を行うものではあるが、自衛隊防衛省がそれに輪をかけて「防衛反応」を示すのは、やはり報道機関のせいでもあるであろう。

また、報道機関は自衛隊の現状に関して様々な注文をつけていたが、しかし、実効的な解決策はいっこうに示されていない。例えば、「モラルが欠如している」「士気が低いのではないか」という批判はあれど、自衛隊を日陰者にし続けている憲法9条改正までには言及されない。朝日新聞をはじめとする、護憲を旗印とする報道機関には不可能なことであろうが、そういった批判をするのであれば、モラル・士気低下に大きな影響を与えているであろう憲法9条に関しても言及するべきではないか。さらには、日本有数の3K職場である自衛隊の給与増額等もモラル・士気の向上に繋がるであろう。これは有能な人材確保にも役立ち、バブル期に入隊した無能とされる下士官*2の放逐にもつながるはずだ。ワーキングプア派遣社員の労働条件向上には余念のない左派・サヨク自衛官の給与アップには一切口を開かない。これは職業による差別の疑いすらある。もちろん、現在の国防費だけでは賄えないため、国防費の拡大も必要であろう。そもそも、現時点での国防費の半分近くが人件費に消えているのである。自衛隊の台所事情は大変厳しく、特別とはいえ、無駄遣いが指摘される公務員*3と同じとは思えないほどの清貧ぶりなのだ。
また、同じく人員に関しては、海上自衛隊の所属艦艇の乗組員が定員数に全く達していないことも指摘されるべきである。これも、人員の増加、すなわち「軍拡」に繋がるためか、報道機関からの改善要求はまったく聞かれない。

先に、「シビリアンコントロール」に関して少しだけ触れたが、情報がきちんと上層部に伝わっていない、また国民にも明かされない、という点から「シビリアンコントロールの危機」が喧伝されているが、これに関しても管理人には大きな疑問がある。
それは、福田総理への責任追及が皆無と云っても差し支えないことである。石破防衛相への辞任要求も、安倍前内閣での大臣不祥事に際してのものより数段大人しい。安倍前内閣の時は、大臣の不祥事に大から小まですべての件で「任命責任」「更迭」「総理の引責辞任」を求めていた報道機関も福田総理には弱みでも握られているのかと勘繰りたくなるほどに弱弱しい。話はずれるが、鳩山法相は失言に枚挙がないが、福田総理の任命責任が問われたであろうか。
鳩山法相の失言以上に、今回の件は問題である。報道機関各社は忘れているのか、それとも分かっていて無視しているのか、福田総理が自衛隊の最高指揮官であることにいっさい触れない。艦長の責任だ!とは叫んでも、その艦長の指揮官たる福田総理の責任だ!という声は聞き取ることが出来ない。
管理人は、辞任こそが責任を取る道、などと言うつもりはない。再発防止に手腕をふるうことこそが石破防衛相の責務であろう。幸いにして氏は国会議員の中でも有数の軍事に関する有識者である。氏の手腕に期待したい。
野党も、憲法に規定されている衆院での再可決に関しては「問責決議案提出」という憲法無視の行為すらちらつかせたが、今回の件での「問責決議案提出」の動きは見とれない。
朝日などの左派報道機関からすれば、安倍政権よりも福田政権のほうが好ましいゆえの「批評」なのであろうし、野党も似たような考えなのであろう。
しかしながらシビリアンコントロールという観点からすれば、これこそが最も問題とされなければならないことであろう。



「あたご」衝突事故からは、様々な思惑が見て取れる。




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鬱々日記〜特定アジア3面記事編



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*1:清谷信一公式ブログ 清谷防衛経済研究所】「【朝日ニュースター】ニュースにだまされるな、じゃなくて東大のキチガイ教授に騙されるな 」より

*2:問題にされる「駆逐艦内でのイジメ」の主犯もこれに属する人物であるようだ

*3:この報道に関しても、管理人から云わせて貰えば、一部のものがセンセーショナルに取り上げられすぎているに過ぎない