ッシング*1という映画を見た。平成15年4月におきた、イラク邦人人質事件を題材としたフィクション、との触れ込み出あったが、概要的には事実に基づいている。自称ボランティアの30代独身女性が主人公で、帰国後、日本中からの非難に晒され再びイラク(映画内では「イラク」の固有名詞は出てこない)へ渡るまでを描いた作品である。
事件当時、管理人は、被害者云々ではなく、被害者の家族のあの非常識な態度に反感を覚えた。政府は自分の娘助け出すために何もかもをするのが当然、と云ったあの態度が理解できなかったのだ。更に云えば、これを政治的に利用しようとした一部報道期間が誇張を交えて報じたことも思い出される。これが被害者家族への「バッシング」を強めたことは否めない。
「バッシング」に晒される被害者と家族を、そちら側からの視点でのみ描いたものであり、事実を伝えることに主眼を置いたものではないが、やはりそういった風に誤解を与えかねない作品であるように思える。被害者及びその父親は圧力により職場を辞めさせられ、その父親は自殺する(事実そうであったか管理人は記憶にない)。また被害女性は地元で様々な嫌がらせにあうなど、その「被害性」が強調された作品となっている。
この作品を見て管理人が思ったことを並べると、まず、この作品の存在意義である。
この作品はカンヌやテヘランの映画祭に出されているようだ。事実に基づいたように描かれているこの作品を、この事件の経緯を知らない人々が見たらどう思うであろうか。最後に、被害女性は日本を棄てるように去るのである*2が、これを見たフランス人やイラン人の日本人観はどうなるであろうか。村八分が未だに強く機能し云々とマイナスイメージを持つことは間違いないであろう。

二つ目は、やはり前後関係・経緯が描かれていない点である。管理人が思うに、あの「バッシング」は被害者家族の傲慢さに因があるのではないか。前記したが被害者家族は娘の命のためには、国策である自衛隊の派遣を中止し撤退させるのは当たり前だ、といった風であった。これでは反感を買うに決まっている。それを描かずに、「バッシング」だけを描けば誤解を招くことは間違いない。

三つ目は、被害女性の言動である。作品内の言動が、現実のものに基づいているのかは知らないが、只管
「私は悪いことをしたの?」
と繰り返していた。
責任感の欠如そのものである。管理人は、ボランティアそのものを悪しとは云わないが、やはり政府が渡航自粛を求めた地域に対し行くのであるから、それなりの覚悟と責任感を有して行くべきであった。しかしながら、彼女の言動からそういったものは一切感じられなかった。自己の正当化のみが図られており、はっきり云って聞いていて気持ちが悪かった。

四つ目は、被害者家族への支援のなさである。事件当時、被害者家族へ同情的であった人々は、報道機関・言論人を中心に少なからずいた。いまでも、被害者家族に肯定的な発言をしている人々はいる。その一人に辛淑玉がいるのであるが、これを政府批判などの材料にしたのみで、肝心の被害者家族への支援はどであったのだろうか。管理人にはこの点が疑問に残る作品であった。
余談ではあるが、辛淑玉は【ケンカの作法】39ページで

お前*3、一度でいいから警察に行って、誘拐事件解決のノウハウを初歩の初歩から勉強してこい、と思ったわよ。政治は巧みな駆け引きを駆使しなくてはいけない。「やります、やります、何でもやります」と時間稼ぎをしながら裏取引をして命を救うのが交渉というものでしょう。

*4
と述べている。勉強しなおしてくるのは辛淑玉のほうである。国際社会に於いて一国の首相が軽々しく嘘など吐けるものか。そういった「やります」といった発言は、それこそ裏取引に於いて行うものだ。一国の首相が報道機関を前にして云うようなことではない。まして、国連の安保理理事国のうち三カ国が反対している件に関して軽々しく「撤退する」とでも云ってしまえば、仏・露・支とそれに独などはその発言を逆手に撤退を求めるであろう。一度国際社会に向けて発した言葉を、被害者が解放されれば手のひらを返すように翻すようなことは出来ない。日米関係・日英関係などに甚大な被害が出たことは間違いない。閑話休題

結局のところ、普通の感性を持つ人にとってはあまり見て気分のいいものではない。
この件に関して、こういった視点からの情報がほしい方のみが見ればいい作品だと思う。間違っても、本件に関する初歩的な知識を有しない方は見てはいけない。
なお、下のURLはウェキペディアに於ける本件の記述である。被害者女性や他の被害者に関する様々な事実が書かれているのでぜひご一読いただきたい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%AF%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E4%BA%BA%E8%B3%AA%E4%BA%8B%E4%BB%B6


では今日もいきましょうか

*1:http://www.bashing.jp/

*2:現実でも、あの被害女性は再びイラクへ入国したようである

*3:小泉総理(当時)※管理人註

*4:これは香田証生氏が人質となった件に関する発言である