インド洋給油論点〜国益か法か

臨時国会の焦点の一つである、インド洋給油の是非及び、イラク作戦に従事している米軍艦艇への直接・間接的な給油の有無の件であるが、報道などを見ているともなんとも一面的なものしか行われていない。
本件は、国益と法の二点から語られるべきである。
まず、現在の給油の根拠である特措法はイラク作戦に従事する米軍艦艇への給油を禁じている。ゆえに問題となっているわけだが、しかし、例えば米軍艦艇に一度給油されたものが、再度給油しなおされるといった事態は、云うなれば法の抜け穴的問題である。米軍は日本政府の指揮下ではない以上、日本の法律に縛られるわけでもない。給された油をどう使おうが米国の自由である。
さて、それとは別問題として国益の問題がある。ミャンマーのことを書いた際にあげたことだが、支那はインド洋への進出を実行している。すぐに脅威となるわけではないが、かの海域を制し牽制を続ければ日本のタンカーなどは迂回せざるを得なくなる状況が作りあげられる恐れがあり、それだけで少なくない損失が生まれる。一日の到着の遅れは、それなりの損失を伴うのだ。それだけでなくとも中東はキナ臭い。忘れてはならないことだが、日本は「西側諸国」に所属する。中東などではそういった認識が強いであろう。本作戦などで米国に協力することが中東諸国の反発を招くという懸念はあるが、それは見識が浅いとしか云いようがない。日本はそうでなくても米国の同盟国であり、経済関係などでも親しき中だ。米国への打撃を与えるために日本を攻撃するという理屈は、本作戦の協力に関係することは殆どない。中東の石油を使い、国力を富ませてきた、ということだけで、イスラム急進派からは「アッラーの恵みを奪う敵」とみなされる可能性は十二分にあるのだ。
また、例えば、ペルシャ湾の西岸に存するイランに火の手が上がった場合、日本の立場表明の如何に関わらず危険に晒されるのは確実である。米軍とイラン軍の紛争となった場合、イラン軍は敵視するであろうし、その逆もまた然りだ。中立国ともなれば、自身のみは自分で守らなければならない。日本に今、それだけの物資と法はあるか。答えは「ない」だ。
国益の観点からすれば、米軍に協力を行い、米軍に日本の船舶を守らせる状況を作り上げるのがベストである。
しかいながら、もうひとつ留意していなければならないことは、以前にも書いたとおりこれは軍事作戦の一翼を担っているのである、そう易々と「一抜けた」などといえるようなものではなく、また、同時に憲法的にも微妙なところであるということだ。そもそも、自衛隊の存在自体が違憲と見做さざるを得ないわけだが、日本人はいつまでこの憲法を野ざらしにしておくつもりなのであろうか。
万が一、給油の継続が不可能となれば、立法がなされていない以上、法治国家たる日本は撤退しなければならない。日本は法により滅びることになりかねない。そしてそのような法しか通せない(もしくは通さなかった)議会の罪であり、ひいてはその議会の構成員を選んだ、国民の罪である。国民の責で国が滅びるのは「正しい」ことではあるが、果たして、滅びたいものであろうか。




ではきょうもいきましょうか。