朝鮮半島南北首脳会談雑記

出に満ちた会談。今回の朝鮮半島南北首脳会談を一言で云うとこうなるであろう。朝日新聞は今朝の社説で『だが、分断後初めて南北首脳が会談した前回のような高揚はなく、どこか実務色も漂う。熱狂は後ろに退き、落ち着いた対話の始まりということだろうか』*1と書いたが、むしろ、必死に「熱狂」を煽り立てようとしているようにしか見えない。ただ、韓国社会と国際社会がそれについていっていないだけである。ノムヒョン大統領を出迎えた北朝鮮国民は熱狂的な歓迎を装うために動員されていたし、「予定には無かった」金正日の出迎えもあった。ノムヒョン大統領本人は、かねての希望で38度戦を陸路でわたり、軍事境界線部分は下車し徒歩で通過した。演出のオンパレードである。
云うまでもないことだが、金正日の登場は「予定通り」である。あの、暗殺におびえるチキンな将軍様が突拍子もないことが出来るはずもない。確かに、突拍子もないゆえに逆説的に安全となるという考え方もあろうが、別段、南北首脳会談をぶち壊すためのテロが計画されていても不思議ではない。そこに金正日がのこのこと現れれば儲け物と云ったところだ。金正日が出迎えに現れた4.25文化会館とやらは当初の式典会場ではなく、当日、急遽変更となったところであるらしい。内外問わずのテロを気にした結果であろう。ここまでして金正日の安全を確保した上での「登場」であったのである。一から十まで、すべて計画通りだったのだ。

今も続いている南北首脳会談であるが、そもそも茶番でしかないこの会談に望むような物はない。南北朝鮮両政府にとり、この首脳会談を行ったという事実こそが必要なのだ。その目的は年末の韓国大統領選挙への梃入れであることは云うまでもない。金正日にしてもノムヒョンの系譜が続けばそれに超したことはない。ただ、そのための土産として朝鮮戦争講和への本格的な筋道付けが示される可能性はある。だが、所詮はそこまでだ。同じく朝日新聞は、今回の会談を「成果を期待する」とし、「核放棄の言質」を取り付けることをとってほしい、と書いた。だが、二国間の協議である今会談でどれほど重みのあるものになろうか。そもそもが大統領選挙のための茶番である今会談は、何度も書くが、それ以上の意味はなく、ましてや外交的な意味・成果など皆無であり期待すべきものではない。
日本政府は、ノムヒョン大統領に「拉致事件」に言及することを言伝たらしいが、例え云ったとしても、

ノ:「ウェノムの阿呆どもが拉致事件にも言及してくれと云ってきたのだが……」
金:「はは。今ここで云ったではないですか。それで義理は果たしましたよ」
ノ:「そうですね。そもそも奴らは朝鮮民族を数百万人も強制連行し……」

といったやり取りが関の山であろう。以前書いたことだが、ノムヒョン大統領は平気で首脳どうしの取り決めを覆す性向がある。金正日の機嫌を損ねる可能性が大である本件を口に出さない可能性も、また大だ。

ともかく、今会談は外交的にはなんら意味のないことなのである。関係するのは韓国の内政、この一点のみで日本が何やかやと気にすることは何もない。




では今日もいきましょうか