サヨクの「文民統制」と日本の戦争

民統制とは、近代国家に於ける兵権の掌握者を端的に表した言葉だ。即ち、現場部隊の暴走を法的根拠を以て抑えようとする考え方であり、民主主義に法り兵権を国民のものとする考え方の根幹を成す。
その文民統制であるが、敗戦以来、軍隊そのものを敵視してきたあまり、日本では正しい理解がなされていない。特に自衛隊の存在を煙たがる(決して国軍や「私兵」の存在を煙たがらないのがミソである)野党左翼陣営からは意図的な曲解が成されてきた。それは今日にも繋がる。管理人が最近読んでいる【護憲派の一分*1】に於いてもこの曲解は大手を振っている。
以前、自民党改憲案の国防に関する部分を自衛隊の制服組に意見を求めたことが「問題」となった。もちろん、国防という尊い任務に日々を費やす自衛官の方々に意見を求めることは別段おかしくない。餅は餅屋。本職の意見に耳を傾けることは賢いやり方である。これを左派報道機関や左派政党は「攻撃」した。即ち、「文民統制」の危機だということである。同書内『文民統制(シビリアン・コントロール)の危機』という小見出しがつけられた項で土井たか子はこう語る。

これ(管理人註※自民党代議士が改憲案に関して幹部自衛官に意見を求めたこと)はたいへん大きな問題を含んでいるんですね。改憲のために、自衛隊の現職の手を借りているというのは、シビリアン・コントロールをまったく無視しているわけです。どこかに吹っ飛んでしまっている。自衛隊法から考えても、自衛隊が政治に介入するということは違法ですよ。だけど、新聞もテレビもこの問題を取りあげませんからね。
こういうのを放置しておくと、今後どんどんエスカレートするんじゃないですか。本当に危ないと思いますね。
(同書P43〜44より抜粋)

これが政治介入になるのだろうか。政治家側から意見を求められ、それに対して真摯に対応しただけである。ここで政治家側の意見を突っぱねたほうが、民意の代表者たる政治家を否定したということで、逆説的に政治介入となるのではないか。
自衛官制服組が自ら進んで「意見書」を提出し、採用しなければ反乱も辞さない、などとすることが文民統制の破綻であり、本件は文民、すなわち政治家の統制下で行われているものだ。文民統制を一つたりとも逸脱していない。土井たか子がこれを以て文民統制の危機、自衛隊(軍隊)の政治介入と云うのであれば、自衛官投票権すら問題視しなければならなくなる。もちろん、自衛官投票権憲法上保障されており、土井たか子も「護憲派」と名乗る以上、更には「常識がない」ことを晒さないためにもそこまでは云わない。が、実際としては自衛官投票権を剥奪せよというに等しい発言なのである。
自民党が、この意見書をそのまま採用したとしても文民統制を犯したことにはならない。国民の代表である政治家のチェックが一度かかり、その上で裁可されたわけである。その時点で責任は政治家に課され、ひいてはその政治家を選んだ国民に責任は帰す。
土井たか子の認識とは真逆に、これは文民統制が日本に於いてきちんと働いている好例といえよう。問題は、この自衛官側の献策を政治家側がきちんと理解できるかという点だ。そのための知識が日本の政治家には完全に欠如しているとしか考えられない。そしてこの悪しき状況は国民の軍事に関する無知が根底にある。今日の選挙に於いて国防に関して熱弁をふるっても国民は支持しないだろう。票が集まる政策とならない以上国防問題を政治家は選挙に於いて語らなくなる。外交問題についてもさして変わらない。外交とは即ち安全保障であり、国防と切っても切り離せない問題である。それどころかこれまで「軍事」や「国防」に関する提言を行うだけで特に野党からは「軍国主義」「極右」「平和の敵」と攻撃された。とてもではないがこの手の問題が語れる状況ではなかったのだ。
問題は政治・政治家側、そして民主主義が我が国の政治体制の基本である以上、その政治家を選ぶ国民にある。

今回のテロ特措法の延長の是非に関してもこのことは云える。政府側が云わないことが問題であるのだが、日本は軍事作戦の一翼を担っているのである。このことを理解する国民は少ない。それは前記のような状況があるからだ。そしてこの問題の根本的な原因は憲法第九条にある。軍隊と戦争を絶対悪としたこの憲法の条文が日本を歪まし、日本国民に判断力を奪った。
軍事作戦を担っているという意識がない以上、正常な判断は不可能であろう。政局の具となるのはある意味で致し方ない。戦争・軍事作戦は挙国一致で行うことである。一度の選挙で議会の情勢が変わり有志連合の作戦の一翼を離れるということなどあってはならない。日本の国際的な信用は失墜する。安倍首相が云った「国際的な公約」というのは云いえて妙だ。
欲を云えば、日本が民主主義国である以上、現状の国民の認識力で戦争・軍事作戦などすべきではない。まずは国民の教育からである。しかしながら国際状況がそれを許さない。日本の国益の確保の為にインド洋への派遣は必要不可欠だ。シーレーンの防衛を国際的に主張する日本の姿勢を崩すわけにはいかない。

余談ではあるが、自民党が出そうとしているテロ特措法に関する代替案では議会での承認が不必要であるらしい。これを朝日新聞は強く批判した。この点だけは管理人も賛成だ。民主主義国家である以上、国民がどれほど軍事に無知であろうとも議会での承認は必要だ。米国を例に挙げれば、軍の派遣には議会の承認が必要だ。逆に、議会が承認すればどれほど大統領の政策と相容れなくても米国政府は派兵しなければならない。これが文民統制である。しかし、同時に米国では大統領により良い判断をさせるため三軍の代表者らが提言をするシステムがある。これを「文民統制の危機」などとは誰も云わない。
日本人の文民統制に関する認識は民主主義国家とは思えないほどに酷い。これでは民主主義が国益を害してしまう。関係法や憲法改正も必要ではあるが、なによりもまずは国民への教育である。民主主義国家・近代国家に於いて、国益有権者の無知により害さないためのシステムが義務教育であり、国公立の高等教育である。
この問題を論じるだけで民主主義から国防、更には教育に関するまで日本の問題点をあぶりだせる。
次期首相は、一夜にして情勢はかわり福田康夫氏優勢となった。管理人の不明を恥じるばかりである。安倍首相を「無責任」と罵るのであれば、先年の総裁選を情勢不利とみて途中で降りた福田氏のほうがよほど無責任だと思うのだが、報道機関などからはそういった声はまったく聞こえない。朝日新聞は今日の社説で汚らしいアリバイ工作とともに福田康夫氏支持を暗に宣言した。
福田氏では上記の問題の解決は不可能であろう。管理人としてはこの政局の転換を嘆くばかりである。






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鬱々日記〜特定アジア3面記事編



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