何にしたら平和は訪れるのか。
人類最大にして人類が滅びるまで答えの出ないであろう疑問だが、これに安易に答えを出そうとする人々がいる。
箕面市平和のまち条例を作る会」(以下「作る会」)の方々だ。以前小欄で取り上げたことがあったが、なんだか佳境らしいので改めて取り上げておく。
「作る会」の方々は、さる三月二日、箕面市(みのお)議会に於いて意見陳述をしたらしくその内容が彼らの運営するブログに掲載されていた。その中で気になるものがあったので少し書かせていただく。

4.無防備地域宣言自衛権の放棄だ、白旗を掲げるものだという批判もあります。私たちのこの運動には、殺されるのはいや、殺すのもいやという強い思いが根本にあります。無防備地域の宣言には、市民のこうした思想的な意味合いも反映されていると私は思いますが、いずれにしろ、仮に「占領」という事態になっても、住民の基本的人権を保障すべきとの、この国際条約も駆使をし、非人間的な支配は許さないという世界の人民の監視、あるいは包囲によって、地域の保全が確立されるようにしていきたいということなのです。

http://heiwaminoh.exblog.jp/5266056/

上の1〜3は法の面からの批判であり俺が何やかや云えるようなものではなく、また、論の根幹ではない。彼らの主張の根幹はこの3にあると思われる。即ち、『殺されるのはいや、殺すのもいやという強い思いが根本にあります。』とあるよう、この部分が彼らの行動原理であり全てなのだ。
だが、この文は読めば分かるよう、全て希望的観測に基づいている。

いずれにしろ、仮に「占領」という事態になっても、住民の基本的人権を保障すべきとの、この国際条約も駆使をし、非人間的な支配は許さないという世界の人民の監視、あるいは包囲によって、地域の保全が確立されるようにしていきたいということなのです。

とあるが、しかし、この文がきちんと世界に於いて通用するならば世の中の圧政は須らく一掃されているべきである。しかし、現実には隣国、北朝鮮中共のようにそうでない国がたくさんある。そして、そういった国が日本の仮想敵国なのだ。つまり、彼ら「箕面市平和のまち条例を作る会」の主張は全く論拠のない空疎なもので、とてもではないが市民を守れるようなものではない、と云うことだ。

彼らが他の意見陳述に於いてどれだけ合法性を訴えようとそんなものは関係ない。政治に於いて大事なのは現実的にどうであるか、この場合、本当にこの条例は市民を守るのか、ということである。そしてこの意見陳述ではっきりしたよう彼らの主張には一片の説得力もない。子供の戯言と同義である。
こういった意見陳述が行われた後、まさか一人でもこの条例に賛成票を投じるのだろうか?もし、そんな人がいるならば、俺はその議員の文章理解力、いや日本語能力を疑う。
この意見陳述には、
「この条例は市民を守れません」
と明確に書かれているのだから。

更に、このような方々を応援しているであろうものが、林信吾氏の【反戦軍事学】や、今月の朝日新書の新刊、軍事ジャーナリスト田岡俊次氏の【北朝鮮・中国はどれだけ恐いか】、そして、高橋哲哉氏と斎藤貴男氏の共著【憲法が変わっても戦争にならないと思っている人のための本】なのだろう。朝日新聞までも「戦争」を食い物にし始めたようである。
林信吾氏の著書に関しては読んでいないので俺としての論評は避けるが、こちらのブログ・【週刊オブイェクト】をご覧になってほしい。林信吾氏本人が登場しての論争となっているため本書を買わんとしている方はその手を止め、一度こちらのサイトに目を通し、その後改めて判断してほしい。
ここで取り上げるのは、【憲法が変わっても戦争にならないと思っている人のための本】である。この間、井筒和幸氏の寄稿への反論を掲載したが、今度は本書内容に踏み込んでみようと思う。といっても一部であるが。
本書は、頓珍漢な質問に答える、という形ではなしが進んでいくが、例えば、71ページには「現代戦争ではハイテク兵器を使うから、徴兵制度の必要はないのでは?」という質問に対し、如何に徴兵制が必要となるか、というとんでもない答えを出している。曰く、「後方支援にはたくさんの人手が必要であり、徴兵される可能性は高い」のだそうだ。しかし、例えばイラクで後方支援に当たっている自衛隊に現時点では死傷者はいない。後方支援の危険性などたかが知れている。それなのに、何の根拠もなく『対戦相手から攻撃される可能性は大いにあります』と書く。だが、少し考えれば、後方支援部隊が攻撃されるぐらいなら当然、国内も空襲などを受けていよう。危険性にさほどの代わりはない。いや、国内の方が危ない、とすら感じる。何せ戦えないのだから。
更に、北朝鮮と戦争になったらどうするのか?といった質問には、戦争しないように外交をする、と答えにならない答えを返す。マトモに質問に答える気は無いようだ。
極めつけは、111ページ、『元自衛隊トップの話――「自衛隊は国民を守らない」』である。これは元統合幕僚会議議長栗栖弘臣氏や元空自三佐であり現在論壇で活動中の潮匡人氏の発言を引用し、如何に自衛隊が国民を守らないかを論っている。だが、この部分を読めば、こういったサヨク的な主張をする方々の戦争に対する認識の脆弱さを知れよう。
自衛隊が国民を直接守るはずがない。本書にもあるよう、国民たる自衛官が死ぬ可能性があるのに、国民を守るなど矛盾にも程がある。本書では、自衛隊ではなく、警察や消防が国民を守る、と書き、まるで自衛隊はいらないかのように書く。しかしだ、警察や消防は国家あってのそれである。その国家を守るのが自衛隊なのだ。
そして本書はとうとうその本当の姿を現す。そう、反日家らの無政府主義者っぷりである。国家を否定すべきものと書くのは斎藤貴男氏のいつもの書き口であるが、そういったものを全開に出し、自衛隊はこの国の支配層たる政治家しか守らない、というニュアンスを書き連ねる。いつから日本は前近代的な国になったのか知りたいが、氏らはフランス革命からの国民国家の成立までの過程を学びなおせ、としか云い様がない。

このような本に頼るから、斯様な条例案が提出されるのである。


ではきょうもいきましょうか